空冷式モジュールチラー「DT-R」シリーズ
新製品「DT-RⅣ」の定格COP 向上と加熱能力大幅増強による必要台数削減 及び 脱炭素化への貢献
三菱電機株式会社 冷熱システム製作所
1. はじめに
2050年カーボンニュートラルの実現は我が国の最重要課題の一つであり、空調冷熱分野における熱源の電化は避けては通れないテーマである。電気式ヒートポンプ技術は大気・水・その他の熱エネルギーを取り込み、投入電力の数倍の熱を供給する高効率技術であり、燃焼式の熱源機器と比較して温室効果ガス排出量を大幅に削減可能であることから、カーボンニュートラル達成に向けた重要な手段と位置付けられる。
さらに、2000年代初頭に多数導入された吸収式冷温水機の更新期が到来しており、施設更新の潮目を捉えた電気式ヒートポンプ熱源への転換は一層加速すると予想する。
一方で、普及には寒冷地における低外気温度域での性能、ますます厳しくなる猛暑への対応、低GWP冷媒への移行、初期投資やライフサイクルコストの課題を同時に解決する必要がある。
また、社会構造の変化で設備導入・運用に際しての人手不足も顕在化しており、省人・省力化も昨今設備機器に要求される重要な課題である。
これらのニーズに対応するため、当社が営業展開している空冷式モジュールチラー「DT-R」シリーズに新製品「DT-RⅣ」を追加する。複数台制御やリスク分散のようなモジュールチラーの優位点を維持しつつ、低外気温度域の加熱能力を強化し、寒冷地への設置に対応する。また、「DT-R」シリーズとしては、冷却用途に特化した「DT-RⅢ・80馬力冷房専用機」・「DT-RⅢ・60馬力クールタフネス仕様」をラインアップし、大容量モジュールによる必要台数削減、猛暑や集中設置環境下での安定運転を実現する。
加えて、ヘッダー内蔵タイプの採用により設置スペースと施工工数を削減、また、当社の遠隔監視プラットフォーム「MEL く〜るLINK」との連携により遠隔監視・異常通知を可能とすることで点検・保守の省人・省力化にも寄与する。
2. 新製品・空冷式モジュールチラー「DT-RⅣ」
2-1 概要
本稿冒頭で述べた課題に対応するため、2015年より発売している空冷式モジュールチラーの「DT-R」シリーズのモデルチェンジを実施する。新製品「DTRⅣヒートポンプ機」は新型圧縮機、HIC回路の搭載等により冷却・加熱ともに定格COPの向上を実現した。また、加熱能力を大幅に増強し、設計条件によっては従来機と比較し必要台数の削減を可能とする。
図1:DT-RⅣヒートポンプ機(4台連結時)

表1:DT-RⅣヒートポンプ機 冷却定格COP1)
| 40馬力 | 50馬力 | 60馬力 | 70馬力 | |
| DT-RⅢ | 3.61 | 3.42 | 3.22 | 3.00 |
| DT-RⅣ | 3.81 | 3.61 | 3.40 | 3.20 |
| 向上率 | +5% | +5% | +5% | +6% |
表2:DT-RⅣヒートポンプ機 加熱定格COP2)
| 40馬力 | 50馬力 | 60馬力 | 70馬力 | |
| DT-RⅢ | 3.64 | 3.52 | 3.39 | 3.30 |
| DT-RⅣ | 4.15 | 3.96 | 3.83 | 3.71 |
| 向上率 | +14% | +12% | +12% | +12% |
表3:DT-RⅣヒートポンプ機 加熱能力比較
(外気0℃DB)(単位:kW)
| 40馬力 | 50馬力 | 60馬力 | 70馬力 | |
| DT-RⅢ | 99.0 | 126.0 | 150.9 | 167.5 |
| DT-RⅣ | 139.1 | 158.7 | 175.8 | 231.0 |
| 向上率 | +40% | +25% | +16% | +37% |
2-2 HIC回路採用による性能向上
新製品「DT-RⅣヒートポンプ機」では、HIC(Heat Inter Change)回路及び中間室インジェクション圧縮機を搭載し、冷却・加熱COP と加熱能力の大幅向上を実現した。
(1) 蒸発工程における比エンタルピ差(冷凍効果)が増大し冷房能力向上。【図2:3→3’】
(2) 凝縮器の冷媒循環量増加により暖房能力向上。【図2:GC+GINJ】
(3) 吐出温度抑制に寄与し、信頼性(故障抑制)も向上。【図2:2→2’】
図2:中間インジェクション回路p-h線図

図3:暖房時の冷媒回路図

2-3 寒冷地への適用
多様な設置条件に適応できる機器が市場で求められる中、特にヒートポンプ機の低外気温度域(7℃DB 未満)での加熱性能向上は競争力の鍵となっている。「DT-RⅣ」では前述の構造変更により加熱性能を飛躍的に向上させており、寒冷地での設置にも十分に適用可能な性能を備えている。
まず、加熱運転における外気温度使用範囲下限は「DT-RⅣ」全機種で-20℃DB まで対応する。
次に、寒冷地での機種選定においては加熱条件が必要台数を左右するケースが多いが、「DT-RⅣ」では低外気温度域を含め加熱能力を大幅に増強し、必要台数の削減(台数削減に至らない場合も余力のある設計)に寄与する。
例として「DT-RⅢ」と「DT-RⅣ」を70馬力機において比較した場合、設計外気温度-5℃DB/85%RH、温水出口温度を45℃とすると、「DT-RⅢ」では加熱能力は146.1kW(無着霜時)となる。一方、「DT-RⅣ」では205.6kW(無着霜時)となり、差は約59.5kW となる。必要能力4)を300USRt(1,055kW)とすると、「DT-RⅢ」では8台(加熱能力計1,168.8kW;余裕率11%)に対し、「DT-RⅣ」では6台(加熱能力計1,233.6kW;余裕率17%)となり、同等の能力を維持しながら2台分の台数削減が可能5)となる。
台数削減により、機器の初期コストはもとより、設置スペースや重量、施工箇所(水配管・電気)、さらにメンテナンス箇所を低減可能となる。これにより、導入から運用に至るまでユーザーに大きなメリットを提供できると考える。
表4:加熱能力の比較の例(70馬力)
300USRt(1,055kW)に対する必要台数5)6)
| 加熱能力kW(無着霜) | 必要台数5) | |
| DT-RⅢ | 146.1 | 8台 |
| DT-RⅣ | 205.6 | 6台 |
| (対DT-RⅢ) | +40% | ▲2台 |
3. 大規模冷却用途への対応
3-1 概要
近年では製造業の暑熱対策、データセンターのサーバ冷却等、大規模な冷却用途の需要増加が顕著である。大規模冷却用途に対しモジュールチラーで対応する場合、設置台数の増加や高外気温度での冷却能力低減が課題となりやすい。「DT-R」シリーズでは、それらの要求に対応した機種、オプション仕様を開発・営業展開している。
3-2 「DT-RⅢ・80 馬力冷房専用機」
「DT-RⅢ」では、業界初7)・業界唯一8) 9)となる「80馬力」をラインアップし、同一能力における必要台数の削減を実現した。台数削減により、省スペース設置に加え、水配管・電気配線等の付帯設備削減による施工の省力化、短工期化に貢献する。
400馬力相当での比較をした場合、その削減効果は表5のとおりである。
表5:400馬力相当比較(80馬力/50馬力)
| 80馬力×5台 | 50馬力×8台 | |
| 定格冷却能力合計 | 1,180kW | 1,200kW |
| 据付面積 | 19.04㎡ (62%) | 30.57㎡ (100%) |
| 製品質量 | 6,000kg (68%) | 8,880kg (100%) |
| 水配管接続箇所 | 10か所 (63%) | 16か所 (100%) |
| 電気配線接続箇所 | 5か所 (63%) | 8か所 (100%) |
3-3 「DT-RⅢ・60 馬力クールタフネス仕様」(冷房専用)
同じく大規模冷却用途を念頭に、業界初10)・業界唯一11) 12)となる「クールタフネス仕様」を開発し、「DT-RⅢ・60 馬力冷房専用機」のオプション仕様として対応している。本オプション仕様では、外気温度43℃まで定格冷却能力(180kW)を維持することが可能となる13)。
近年、猛暑が長期化する傾向が強まり、製造ラインの冷却工程やデータセンターの用途では外気温の上昇による性能低下を抑えることが重要課題となっている。こうしたニーズに応えるのが「クールタフネス仕様」であり、80馬力冷房専用機とともに、発売以来採用実績を着実に伸ばしている。
図4:60馬力標準/クールタフネス仕様の冷却能力比較(冷水出口7℃)

4. 「DT-R」シリーズ共通の特長
4-1 ヘッダー内蔵仕様
「DT-R」シリーズは3種の配管接続仕様を備えており、その一つであるヘッダー内蔵仕様は、複数台(最大6台)のモジュールを接続するヘッダー配管を機器内に内蔵した当社独自の仕様である。モジュールチラーを複数台連結して運用する場合、ヘッダー配管(集合配管)が必要であり、ヘッダー配管は主に複数箇所からの配管を統合し複数箇所へ冷温水を供給する役割を果たす。さらに通常はモジュールごとに現地水配管と接続する必要があるが、ヘッダー内蔵仕様は最端部のモジュールのみで配管接続が完了し、配管接続箇所数を削減できる。各々の現場の設置条件に対し柔軟に配管仕様を選択可能な点が「DT-R」の強みである。
図5:ヘッダー内蔵仕様イメージ

図6:選択可能な配管仕様

4-2 最適台数変流量制御
近年のモジュールチラー採用現場では、省エネ性の追求のため、チラー内蔵ポンプの変流量制御による搬送動力削減が一般化しており、システムの安定性確保とともに運用上の重要な課題となっている。
2023年より、「DT-RⅢ」内蔵ポンプ仕様ではモジュール間の台数制御方式として「最適台数変流量制御」を実装し、「省エネ性の追求」と「システム安定性の担保」を両立している。制御詳細は後述する。
4-2-1 圧縮機運転容量による負荷熱量推定流量制御
本制御では、系統内で出口温度制御中の各モジュールの圧縮機運転容量を集計し、最適な系統内の運転台数を演算して決定している。
インバータ機の部分負荷特性は、中間容量のCOPが高くなる山なりのカーブとなるが、その特性を考慮した最適な運転台数切替点を演算することで、負荷に対し均等に台数切替させる場合(図7 左側)に比較して平均的な運転COPの向上が可能となる。(図7 右側)
図7:系統内運転台数切替イメージ

4-2-2 内蔵ポンプ周波数制御・流量または往還差圧の監視による安定制御
省エネ性の追求には、内蔵ポンプ周波数制御による搬送動力削減も有効な手段である。本制御においては、制御安定時には内蔵ポンプ周波数を漸減させ、バイパス流量・搬送動力の低減を図っている。
単式ポンプシステムにおいては過渡的な流量変動に対応するため、往還差圧を常時監視し目標差圧に近づくようバイパス弁開度制御を実施する。一方、複式ポンプシステムにおいては負荷側流量計の情報を基に一次側流量>二次側流量となるように制御する。
また、運転台数は前項で述べたロジックを軸に決定するが、現状の運転台数で流量(差圧)不足となる場合は増段させ、減段時には減段後の台数で流量(差圧)不足を招くことがないかの判断を挟むことで必要流量を担保する。
5. 常時遠隔監視システム「MEL く~るLINK」
当社はクラウドを活用した常時遠隔監視システム「MEL く~るLINK」を営業展開している。本サービスは、業務用空調冷熱製品向けの機能として、①異常通知、②運転データ確認、③遠隔冷媒漏えい診断を備えており (※「DT-RⅣ」は発売後に順次対応予定)、異常情報を早期把握・迅速な復旧と、点検業務の省人・省力化を実現し、現場運用の効率性および安全性の向上に資するサービスである。
「MEL く~るLINK」(有償サブスクリプション契約)の利用には当社の空調冷熱総合管理システム「AE-CZJ/EW-CZJ」が必要であり、構成は図8のとおりである。
図8:MEL く~るLINK 構成イメージ

「MEL く~るLINK」は空調冷熱製品に異常が発生した場合、登録したメールアドレスに通知を行い、また同内容をWEBブラウザ上でも確認することが可能なため、製品を直接確認することなく異常内容を即時に把握することが可能となる。
また、運転データ閲覧機能では、高圧圧力や低圧圧力、冷温水温度等の運転データ(5分毎)が確認可能であり、設備管理者の日常管理業務の効率化をサポートする。
加えて、遠隔冷媒漏えい診断機能により、フロン排出抑制法で定められた3 ヶ月に1回以上の簡易点検を代替することが可能となり、簡易点検のための現地訪問が不要となる。これにより、従来点検に要していた時間や労力を大幅に削減する。
6. おわりに
本稿で紹介した空冷式モジュールチラー「DT-R」シリーズは、2025 年10 月に発売10 周年を迎えた。これまでのご愛顧に深く感謝するとともに今後もカーボンニュートラルの実現や省人・省力化といった社会課題への対応を通じて、お客様に価値を提供する製品開発を継続してまいります。
図9:DT-R シリーズ10周年記念ロゴ

注釈
1)外気温度35℃、冷水入口12℃、冷水出口7℃
2)外気温度7℃DB/6℃WB、温水入口40℃、温水出口45℃
3)外気温度0℃DB/85%RH、温水入口40℃、温水出口45℃。着霜による暖房能力減少係数は考慮していない。
4)必要負荷に対する安全率等は既に見込んであるものとする。
5)着霜による性能影響は除外している。実際の選定においては条件に応じてそれらの影響も加味して選定が必要となる。
6)外気温度-5℃DB/85%RH、温水入口40℃、温水出口45℃。着霜による性能影響は考慮していない。
7)2021 年7 月発売時点(当社調べ)
8)同等サイズの空冷式モジュールチラー(散水仕様無し)において
9)2025 年11 月時点(当社調べ)
10)2021 年7 月発売時点(当社調べ)
11)同等サイズの空冷式モジュールチラー(散水仕様無し)において
12)2025 年11 月時点(当社調べ)
13)冷水出口7℃において


